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4/12 宮沢賢治と宗教観とイーハトーブ ~『よだかの星読書会』~

どうも、田舎キャンパス所属の心理学部三回生、三好幸多です。

更新が遅くなりましたが、4月12日(土曜日)に宮沢賢治の『よだかの星』の読書会を開きました。
新学期始まって初の読書会であり、新入生もたくさん参加していただきました!
個人的にはニューフェイスに囲まれたのと、読書会のホストになったのが初めてなのでとてもテンパっていたと思います。
さらに参加してくださった人数も思いのほか多く、あっぷあっぷしながらも何とか終えました。(とても楽しかったです)

その内容と感想を振り返りつつ、ブログ(読書会要約)を書きたいと思います。


宮沢賢治といいますと『銀河鉄道の夜』や『セロ弾きのゴーシュ』など多くの童話や、病床に伏しているときに手記に走り書きした『雨ニモマケズ』などが有名です。他に詩などもたくさん書いていますが、一般的な彼のイメージは「童話作家」である人が多いかと思います。
また賢治の作品全般の特徴として真っ先に挙げられるのは、その擬音語を巧みに使った形容描写でしょう。『風の又三郎』の「どっどどどどうどどどうどどどう」のような一度聞くと覚えてしまうような形容は、賢治のオンリーワンであるという意見も読書会において聞こえてきました。
また読書会の参加者からの感想で、
「賢治の作品は仏教的な説法みたいだ」
というものがありました。この話をするときは、賢治の一生を簡単に把握しておく必要があります。

宮沢賢治は1896年に岩手の質屋に生を受けました。幼少期は鉱物や昆虫の採集に熱中しつつ、冷害や不作によって家財道具を質に入れなければならない農民の人びとを間近に見て育ちました。またそのころから浄土真宗信者であった父について講話を聴きに行くなど、小さなころから宗教に触れていました。中学校では同校の先輩である石川啄木に影響を受けて短歌をたしなみました。そして上級学校進学ののち、島地大等訳『漢和対照妙法蓮華経』を読み、体が震えるほどの感銘を受けたのです。このころから浄土真宗ではなく法華経の熱心な信者となり、法華経団体である国柱会に入会し、そこでの師に法華経布教のための童話を書くことをすすめられます。
つまり始まりは法華経の普及だったのです。
そういう目で見てみるとなるほど『よだかの星』の中にも、鷹とよだかと甲虫の食物連鎖が輪廻転生を彷彿とさせたり、最期に星になるシーンは解脱をイメージさせたりと、読書会の中でもいろいろな仏教的見解が出てきて、確かに宗教の説法のようにも思えました。
しかし他の意見の中に、賢治は童話の中で答えや結末を明示していないというものがありました。この点が当時主流であった芥川龍之介の童話『蜘蛛の糸』や新美南吉の『ごんぎつね』などの作品とは決定的に違う点であり、違和感を覚えるところです。布教のための童話であったなら、法華経を称賛する内容にするのがセオリーですが、『よだかの星』では兄弟であるカワセミがよだかに死なないでと懇願し、またよだかが星になったことを称賛する文章はどこにもありません。これは宗教的には正しくとも、社会的には許容されないためではないかと思います。そのようなジレンマを賢治はこの作品の中に封じ込めたのではないかという見解でした。
これらの賢治の作品は彼の心象世界の理想郷であるといわれています。その世界を賢治はイーハトーブと名付けました。また賢治はこういったイーハトーブの世界がもうどうしようもなく本当にある気がしてならないし、その世界を書いているだけでそれがいいものかどうかは私にもわからないといっています。
つまるところ賢治が物語を書くきっかけは法華経であったが、法華経の布教のために書いてるわけではなく、賢治に強く影響したものがダイレクトに作品ににじみ出ているのであり、
賢治にとって法華経は宗教ではなく自分の見えている世界の構成要素であったのではないのでしょうか
だからこそ賢治晩年の作品『雨ニモマケズ』の中の賢治が目指した人物は、明確な宗教を信仰することはなく、ある種キリスト教でいうところの「エデンにいたころの理想状態の人間」に近い描写になっており、賢治は法華経のみにとらわれず宗教を超えた世界観を持っていたのではないかという結論を読書会では出しました。
これら賢治の童話は、宮沢賢治の宗教を超えた世界観の視点を追体験できる本ということです。おそらくたくさんの本が作家の視点を追体験できる可能性を秘めていることでしょう。

今回の読書会は緊張とおしゃべりな性格のせいで自由に発言しにくく、またかなりふわふわとした話の着地となってしまいましたが、ホストとして皆さんに意見の賛成反対はおいといて、
他の人がどのように本を読んでいるかを知ることで得られる客観的視野と、作家の視点に立つことによって得られる視野のすばらしさ
について実感をもって知っていただけたらいいなと思いました。
つたないホストでしたが、参加していただき本当にありがとうございました!
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